― 電子カルテ 導入記 ―


2001年11月開院時より、電子カルテ 【Merits】 Medical Station を導入しています。
当時は、電子カルテも草分けの時代でした。
いくつかのベンダーが電子カルテを手掛けていこうかという状況で、「完成品に近い電子カルテ」を提供できる企業も少なければ、宣伝や情報もほとんどない状況でした。


しかし、
@ 10年後には、電子カルテを導入していなければ、他の医療機関との連携に不便が生じるだろうこと。


A 電子カルテに慣れる時間が必要であり、新規開設の時期に導入することが、最も効率的であろうこと。


B 情報は、紙媒体への保存より、電子媒体への保存の方が、圧倒的に便利であり、応用もでき、情報も整理でき、自身の研鑽にもなるであろうこと。


C カルテ保存のスペースなどを気にしなくてもよいし、いつまでも劣化することのない表示や情報を保持することができること。


D 人件費や設備などに要する経費の節約になるであろうこと。

を想定して、導入に踏み切りました。


そして、選んだのが、当時最も”宣伝活動が盛んであった”BML 【Merits】 の Medical Station という電子カルテでした。


― 電子カルテ自体への感想 (予想外に悪かったこと) ―

導入して6年が経過しますが、予想に反したのは、

@ 他の医療機関との、電子媒体による情報交換に対してのネットワーク作りが思うように進まなかったこと。
(今後も、ウイルス混入問題や、情報漏洩問題などがネックとなり、簡単には、ネットワーク作りは進んでいかないであろうと予想される。)

A 電子カルテの入力する情報のパターンが、統一されておらず、各電子カルテシステム間での互換性が乏しいこと。 
(他社の電子カルテへのデータ移行が困難なこと。 
つまり、一度導入してしまえば、他社のシステムへの切り替えが困難なため、導入した企業の言いなりになってしまうこと。)

B 自社の企業経営が先行し、Aを実現しようとする気概が、電子カルテ開発側にないこと。

C 電子カルテのサポート代、コンピューターの入替、付属機器の取替(プリンター、消耗品、無停電装置のバッテリー)などに、予想以上のコストがかかること。 
更には、入力用秘書の採用など、新たな人件費が生じてきたこと。

などです。

上記の@〜Bは、今後、是非とも改善し、オープンなシステム、スムーズで安全な情報提供ができるように、厚生労働省や自治体などが本腰を入れて、実現すべき問題であると思います。 (営利を目的とする企業に期待しても無理である。)

Cに関しては、予想外ではありましたが、おそらく今後も、改善の余地はあまりないものと思われます。
電子カルテを導入するメリットに、「人件費の削減」、「紙コストなど経費の削減」など、今でも経済的メリットを強調している企業などがありますが、これは全くの”嘘”です。
むしろ、電子カルテは、お金がかかるもので、費用面では紙カルテよりも、デメリットの方が大きいと思います。

― 電子カルテのメリット ―


電子カルテのメリットに関しては、

@ データが、小さな媒体にいくつでも、いつまでも保管できること。
(勿論、いくつも容易にデータを分け持つということは、情報漏洩等の危険性も高くなるが、それは保管に対する注意の問題であって、電子カルテの本質的な問題ではない。)

A 情報管理ができているので、統計処理や検索が容易であること。

B レセプト機能との連動で、保険診療に関する理解や共感が得やすいこと。

などです。 

紙カルテにできることで電子カルテにできないことはないといっても過言ではありませんが、その逆はたくさんあります。
したがって、どちらがいいかといわれれば、電子カルテの方が良いに決まっています。
これは、肺癌を発見するのに、胸部レントゲンがよいか、胸部CTがよいかを論じていることと同じで、CTのほうが良いに決まっています。 

しかし、導入する際にどちらがよいかということとは別問題です。

コストや、人件費、放射線被爆、読影する医師の能力など様々な要素が入り込み、全ての診療所が、CTを導入するというわけではないでしょう。 それと同じであると思います。

― Medical Station の印象 ―

導入費用とサポート代が突出して高い、電子カルテの筆頭です。

最大のメリットは、

人海戦術に長け、リモートメインテナンスができ、かつ、各地に検査会社としての拠点をもって活動しているBMLが母体ですので、ハード面でのサポートとしては的確かもしれません。

故障した場合の代替製品も大体、半日程度で用意ができますし、トラブル時には、サポートの方に全て任せますので、それ以外のことに専念できます。
(診療中に、電子カルテシステムがトラぶれば、大変です。 システムの回復にも心血を注がなければなりませんが、周囲はパニックになりますので、スタッフや、患者さんの対応に追われなければなりません。)

ハード面でのトラブルに際して、全く同じ設定のPCを常時待機させて、万一の場合に備えるくらいの準備をしていれば別ですが、それも大変な労力と費用の無駄が付きまといます。

また、ソフト面のトラブルなら、コンピュータやネットワーク接続などに詳しい医師なら対応は可能であると思いますが、結構、困難なことが多いので、任せるほうが無難です。


デメリットは、

ご存知のとおり、導入費用、サポート代とも、非常に高いです。
しかし、導入費用に関しては、納得の上でしょうし、サポート代も保険料としては高いですが、致し方ないところだと思います。
(価格に不満があれば、導入しないように)

導入後、経験しないとわからないデメリットとして、

@ レセプト機能が悪い。 (通常のレセコンと比較して、無駄な機能、できない機能が結構多い。 例:院内処方・院外処方への一括変換、正しい算定をしていても何度も同じ警告を繰り返す学習能力のなさ)

A レセプトの不具合が、バージョンアップ後に必ず出現する。(処置や指導料などで算定できるものが、入力しても算定できなかったりする。)

B 不具合に対する修正が極めて遅い。 また、不具合や機能面の改善を要求しても、それに対するレスポンスがない。

C ユーザーの声を反映するオープンなシステムがない。

D 情報公開に対してきわめて閉鎖的。

E ユーザーに対する積極的な follow がない。 
 (ユーザーを対象とした勉強会や講習会、懇親会などの企画はほとんどない。 ユーザーからの口コミで導入実績を上げている他社の電子カルテもあるが、この電子カルテの新規導入は、全く企業中心である。)


Medical Station にはユーザーの声を見聞する場所がありません。

新規導入の方を対象に、”メディカルイノベーション”なる企画はあります。
一度、参加されれば、わかると思いますが、参加者全員を対象とした講演では、質疑応答はありません。
たくさんデモ機を設置してあり、その場の担当者相手に、個別の質問を受け付けるという形式をとっています。

個々の質問に対して回答するというのは、マンツーマンで、きめ細かいサポートを行っていると考えてはいけません。 
勿論、それも大切ですが、いろんな方の質問の中には、自分の知らない機能や不都合を指摘されることが多々あります。 そのような情報の公開には極めて消極的であるということです。 

注) Medical Station には Merits が主導するメーリングリストがありません。 
現在、宮崎県の外山先生が個人的に開設しているMLが、私の知る限り、唯一のものです。 現在の参加者が何名なのか存じません。 

常連で、発言する医師は、大体20名程度です。
Merits のオフィシャルなMLではありませんが、Medical station 開発部門の方は参加し、主には、ユーザーと開発側とのやり取りが主体となっています。
ここでは、他のユーザーからの意見や希望、不具合の指摘なども見聞できます。

このMLの存在は、別のMLの先生から知らされて、私も参加するようになりましたが、Merits からのこのようなMLがあるという案内は一切ありません。

このMLに参加させていただくようになってから、自分の意見を述べたり、他のユーザーの声が聞けたりできて、少しは、当方が、Medical Station から受けるストレスのはけ口になっています。

― RS Base について ―


2004年12月から、”RS_Base”という画像ファイリンク゛システムを採用しています。

以前からファイリングシステム導入希望がありましたが、Medical Station と業務提携している業者の画像ファイリングシステムではコスト面での折り合いが付かず、導入を残念しておりました。

この”RS_Base” の存在は、他のMLから知りえたのですが、導入費用、サポート代ともなんと”0円”。 MLへの参加が義務付けられており、この参加費が年間5000円程度です。 しかも、ソフトの機能も”超優秀”です。

開発したのが、広島県の山下先生という医師です。
MLではいろんな質問に対し、開発者の先生が、直々に回答してくれるという”超はなれわざ” を日々こなされております。

当方も、設定で困った時、土曜の深夜や日曜日に至っても、MLにて対応していただいたご好意と熱意には、感嘆・感謝の極みです。

現在、Dynamics という電子カルテを導入している先生方を中心に、1000人強のユーザーがいらっしゃいますが、商売されておりませんので、勿論、宣伝は無し。
口コミで、ユーザーが増えている状況です。

私も初歩ユーザーですが、現在ファイリング数は、3万件に至っております。
Medical Station との連携も、患者情報出力や処方出力、カルテの開閉時の自動呼び出しが可能で、これ無しには、診療できない状況となってまいりました。
(Medical Station との連携には、Merits に対して、導入時の設定費用が必要となります。)

(また、RS_Base 内の設定やトラブルに関してのサポートは Merits では行いません。)

電子カルテのサーバーとRS_Baseのサーバーとは、別々に設定していますので、同時にトラブルになることはほとんどありません。
したがって、電子カルテシステムが何らかのトラブルで使用できないとき、レセプト機能は使用できませんが、過去の診療状況や、過去処方はRS_Base で参照できますので、非常に便利です。


但し、難点は、このシステムをサポートできるベンダーが非常に少ないことです。

私も、導入時は、クロスポイントさんにお願いしましたが、非常にお忙しいようです。
少しずつ、コンピューターやネットワークの知識、ソフトの機能などを自分で勉強して、少々のトラブルでも解決できる能力を身につけていく気概がなければ、導入は難しいかもしれません。

しかし、導入される多くの先生方は、初めからコンピューターに聡い方ばかりではありません。
RS_Base 導入を機会として、PCやネットワークに対する知識を増やされています。


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2007年1月記載


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