
| 症例5-1) 亜急性甲状腺炎 (1) |
某年11月、39度の発熱と前頚部痛を主訴に、1人の女性が当院を受診されました。
数日前から右前頚部が痛くて、徐々に左に痛みが移動してきているといいます。
前頚部にある甲状腺が腫大し、同部に痛みを伴っています。
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亜急性甲状腺炎を知っている医師なら、見逃すはずのない、典型的な症例です。
亜急性甲状腺炎も”超有名な病気”で、医師国家試験の常連問題ですが、日常診療では、滅多にお目にかからない疾患です。
甲状腺機能亢進症で有名な”バセドー病”や、機能低下症で有名な”慢性甲状腺炎(橋本病)”なら、よくお目にかかります。
特に、症状は、機能亢進症ですから、”バセドー病”と間違える医師があっても致し方ないですが、今回の決め手は、”痛みが移動した”という患者の一言で、亜急性甲状腺炎を確信しました。 エコーは右上段です。
勿論、下記の説明の通り、血液検査所見等も”バッチリ”で、ステロイドの投与により、1日で、発熱と疼痛は軽快しました。
その後の経過も順調で、1ヶ月少しで、ステロイドも中止できました。
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| 症例5-2) 亜急性甲状腺炎 (2) |
実は、上記の症例よりも前の話ですが、もう1症例ありました。
某年4月、微熱と左前頚部痛を主訴に、1人の女性が当院を受診されました。
痛みは、左の耳前部に放散するといわれました。
甲状腺の腫大は触診では明らかでありませんが、圧痛が認められました。
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この症例は、典型的ではありませんでしたが、”左耳前部への放散痛”というのが、亜急性甲状腺炎を疑うきっかけとなりました。 エコーは右下段です。
血液検査上も、甲状腺ホルモン値の高値、赤沈の亢進、TSHレセプター抗体陰性、血中サイログロビン上昇などから、確定しました。
本症例は、甲状腺機能亢進症状をほとんど認めず、軽症であったため、無投薬経過観察で治癒しました。
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本症例などは、当院を受診しなければ、普通の風邪と診断されていたでしょう。
そして、”風邪”と診断されようと、”亜急性甲状腺炎” と診断されようと、経過も結果も同じであったと思います。
”亜急性甲状腺炎”と診断するには、エコー検査や、ホルモン検査などでの確証が必要です。
経過・結果だけが全てであれば、高い検査を行わなくてもよかったかもしれません。
しかし、できるだけきちんとした病名を診断し、治療方針を立てることが、医師の第1の責任であると思います。
決して、無意味ではないことをご理解いただきたいと思います。
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| 亜急性甲状腺炎の説明 |
〔頻度〕
甲状腺疾患患者のうち、亜急性甲状腺炎患者は1.7 〜 2.2% 程度。
〔病態〕
ウイルス感染による甲状腺の炎症と考えられているが、同定されていない。
発症年齢は40歳代が最も多く、女性に多い。
甲状腺組織の破壊に伴って、ホルモンが血中に漏出するために甲状腺機能亢進症となる。 その後、急性炎症が治まる、甲状腺は逆に萎縮傾向となり、一過性に甲状腺機能低下症となる。
その後は、甲状腺機能は正常化し、甲状腺の性状ももとに復帰する。
稀に、萎縮し、永続性甲状腺機能低下症になる場合がある。
〔臨床症状〕
@ 発熱,特に朝方は低く,夕方に上昇する弛張熱をきたす。
A 前頸部痛および前頸部腫脹、特に甲状腺部から下顎部,耳介後部にかけて放散する痛みある。
B 甲状腺の腫脹部位の自発痛、圧痛が強いことが多い。
C 疼痛はしばしば反対側に移動する。
D 甲状腺機能亢進症による症状:動悸,息切れ,全身倦怠感,体重減少など。
〔検査所見〕
@ 赤沈の亢進が著しい。
A 甲状腺ホルモン値の上昇。
B 甲状腺自己抗体は陰性.。
C 甲状腺超音波断層撮影:腫脹・圧痛部位に一致して境界不鮮明な低エコー領域を認める。
D HLA-Bw35 という白血球抗原マーカーを有する方が発症しやすい。
〔治療の基本方針〕
@ 自然治癒する疾患。
A 症状が自制範囲内であれば無治療で経過観察しておいてよい。
B 多くの例で炎症症状が強いため,抗炎症薬の投与が必要である。
C 中等症以上の例では副腎皮質ステロイド剤が用いられる。
D 初期でも、甲状腺ホルモンを抑える薬は使用しない。
〔参考文献〕 今日の診療プレミアム Vol.15
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