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本文へジャンプ 平成19年1月1日 
             

 



― 閑 話 休 題 (症例編 4-2) ―

 症例2) 頚部リンパ節腫大 (2)  

某年6月 1人の女性が、右頚部に有痛性の小豆大のリンパ節が触知されると相談されました。
頭部に湿疹がある以外は、特に感染巣となるものはなく、同部からの細菌の進入によるリンパ節炎と考え、抗生剤を処方しました。
1週間後、リンパ節の腫脹と疼痛は軽快したため、経過観察としました。


しかし、その後、再度悪化したとのことで、別の外科医院を受診したようです。
そこでは、血液検査、胸部レントゲン検査などを施行されたようですが、異常なしと説明を受け、再度、抗生剤が処方されました。
しかし、それでも大きさ自体に改善なく、その医院から、病院の耳鼻咽喉科を紹介されました。

今度は、いきなり、細胞診検査(針でリンパ節を刺して細胞だけを注射器でとる方法)を施行されたというのです。 
結果は、血液の混入のみということで検体不適格。 
2ヵ月後に再検査するように説明されたとのことでした。


前回当院受診後から、1ヶ月後、当院を再診されました。
その間に、上記の経過があったことをご本人が話されました。

当方で、確認すると、確かに、リンパ節は前回よりも大きくなり、母指頭大になっています。 可動性はあり、圧痛、熱感は認めません。
エコー所見は、右のとおりです。
当方は、”精密検査”や”抗生剤投与”を選択せず、「無治療・経過観察」 を指示しました。

結局、その後、徐々にリンパ節は縮小し、2ヵ月後には消失しました。 
(その後、半年以上経過を見ていますが、再燃はありません。)

2ヵ月後に細胞診の再検査を指示されたのでどうしようかと相談されましたが、
「大きなリンパ節でもうまくいかなかったのに、小さくなって触知もしないリンパ節をどうやって穿刺するのでしょう?」

つまり、感染性か、反応性のリンパ節腫大であり、自然経過で治癒したのです。


当方が、再診時の時点で、積極的に”生検”を勧めなかった理由

1.初期の抗生剤治療の際に、一旦軽快していたこと、また有痛性であったことから、初回のリンパ節腫大は細菌性の可能性が高かったこと。
2.再診時のリンパ節腫大は、1つのリンパ節にとどまっていたこと。
3.楕円形のリンパ節で、エコー上、周囲との境界が比較的不鮮明にもかかわらず、触診上は、可動性のあるリンパ節であったこと。
4.今回のリンパ節は腫脹してからまだ、1ヶ月もたっていなかったこと。
5.現在の大きさになるまでは早かったが、その後、大きさに変化がなかったこと。
6.生検は、頚部に手術痕が残り、美容上、気にされる可能性があること。
7.癌の転移を考えるような原発の肺癌、乳がんや、肺結核もないこと。


当院が、再診時に、細胞診を行わなかった理由
(当院では、リンパ節生検はできませんが、細胞診検査は施行できます。)

1.当方が可能性として最も高いと考えた疾患が、”壊死性リンパ節炎”であり、それならば、細胞診では診断できないこと。 (生検なら診断可能。)
2.甲状腺内の悪性リンパ腫であれば、とりあえず、細胞診を行うかも知れないが(勿論、病理分類までは無理でも生検を行う価値のある状況かどうかはわかる)、
リンパ節をターゲットとした場合は、リンパ球が採取されても、かなり特徴のある細胞が取り出せないと診断は困難であること。
3.悪性所見が出ないとき、手技が未熟であったのか、検体がうまく取れなかったのか、本当に悪性でなかったかを区別することが困難なこと。


● 頚部のリンパ節が腫れるのは、子供ではよくあることで、大抵は、一過性で、炎症性のものです。 
ただ、大人では、1-2週間の経過で改善しない場合、「悪性ではないか」 と考えたくもなります。

これを、確定するためには、リンパ節生検が必要ですが、頚部に傷跡が残りますし、侵襲的ですので、”悪性リンパ腫” などを疑う以外のケースでは、できれば施行したくないものです。

例えば、高熱が出て(または不明熱が持続して)、リンパ節腫大のみの所見ということであれば、まず、”悪性リンパ腫”を疑って、即座に生検を勧めます。
この場合、結果が”炎症性”のものであっても致し方ないと思います。

しかし、他に症状も異常もなく、リンパ節のみ腫れている場合は、しばらく経過観察をします。
経過を見ないで、触診やエコー所見、患者からの問診のみの情報で、”悪性リンパ腫”や”癌性”、”結核性” のリンパ節腫大であることを確信し、生検を勧められる医師は、”名医” です。
逆に、経過を見ないで生検を行い、その結果が、”非特異的な炎症性変化” ということであれば、生検を依頼した医師の見識を疑いたくなります。

但、経過観察というのは、放置するのではなく、「その経過がどうなればどうするのか」 というプランを考えていなければなりません。
また、いつ、”生検” を勧めるのか、なぜ”生検”を勧めないのか、理由が必要です。

勿論、その説明に根拠があっても、結果として、間違っていることもあります。 
疾患は、100%教科書どおりにはいきませんので、予想のつかない結末を迎えることもあります。

その時は、”すみませんでした。” と誤るしかありません。
しかし、これは”誤診”とは考えません。 
その根拠を提示でき、それが、現在の医学の水準で妥当であれば、それは”医師”の責務としては全うしていると考えるからです。

勿論、それが、医師の個人的な”勘”のみであったり、個人の経験というだけの論拠で説明する場合、その結果が間違ったものとなれば、”誤診”の可能性があると思います。


4-1) 悪性リンパ腫のケースも含めて、

無投薬で経過観察する医師に対して、患者さんは一見、無責任に感じるかもしれません。 (何とかして欲しいというと思うのは当然の感情とも思えます。) 
医師にとっても、無投薬で経過観察することは勇気のいることですし、お金儲けにもなりません。(無駄な薬でも処方すればその分、少しでも儲かります。)

しかし、「無投薬での経過観察を指示する医師」、「根拠を持って抗生剤を処方する医師」、 「とりあえず抗生剤を処方して様子をみる医師」 、ケースはいろいろありますが、どれが正しいのでしょうか? 
その答えに、絶対正解はありませんが、ケースに応じて、よく考えてみることです。

頚部リンパ節腫大の原因

1.感染に伴うもの 細菌性
ブドウ球菌
梅毒
ウイルス性 伝染性単核球症
風疹、麻疹
サイトメガロウイルス
ネコひっかき病
その他 結核
ツツガムシ病
2.感染以外の
  反応性腫大
自己免疫疾患 全身性エリテマトーデス
皮膚筋炎
Sjogren 症候群
関節リウマチ
サルコイドーシス
アレルギー 薬剤
血清病
3.腫瘍性 リンパ球系 悪性リンパ腫
リンパ性白血病
マクログロブリン血症
続発性 癌のリンパ節転移
急性骨髄性白血病
慢性骨髄性白血病
4.脂質代謝異常 Gaucher 病
Niemann−Pick 病
5.内分泌疾患 甲状腺機能亢進症
Addison 病




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