
| 症例1) Mondor 病 (モンドール病) |
某年10月、1人の女性が当院を受診されました。
主訴は、左前胸部の皮膚の下に線状のものが触れて、触ると痛いということでした。 ご本人は、「血管が固まったような感じ」 と表現されました。
皮膚の下に”線状”の硬結が触れます。 これが、心窩部(みぞおち)レベルから上方に向かって上下に10cm程度延長しています。 皮膚の表面には発赤などは認めません。
脳外科領域で、水頭症の患者さんに施行される「脳室ー腹腔内シャント」が胸壁で触れるのと同じような感覚でした。
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私は、これが静脈炎の一種で、このようになる病態が存在することは知っていましたし、ヒトの名前の付いた病名が存在することも知っていましたが、診察の現場では、その病名を思い出すことができませんでした。
”静脈炎”や”リンパ管炎”で検索しても”ヒット”しません。
最終的には、”索状物”というキーワードで、やっと上記の「モンドール病」という診断に行き着きました。
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ところで、この患者さんは、当院を受診する前に、この疾患に対して、婦人科、内科、整形外科を受診されました。
婦人科は専門外にしても、内科を受診した際には、”筋肉性のものだろう”といわれて、整形外科受診を薦められたとのことです。
整形外科では、”原因不明”、”気のせい” といわれたとのことです。
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私も、病名を即座には答えられませんでしたので、偉そうなことはいえませんが、少なくとも、患者さんの方が、医師よりもはるかに、病気の本態を捉えているなと感心しました。
つまり、原因が何か、病名がどうかということではなく、触れるものが、血管か筋肉かという常識的な判断が、医師にできていないということです。
胸部の皮膚の下を上下方向に線状に走る筋肉がありますか?
このような走行をする可能性のあるものは、”静脈”か”リンパ管”しかありえません。
”動脈”はもっと深部です。
まして、筋肉は、肋間に添って存在するもので、何肋間も跨いで上下に走行するような筋肉があるでしょうか? しかも径数mm 程度の線状形態で・・・・。
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| Mondor 病 (モンドール病) の説明 |
〔概念〕
主に体側壁の表在性の静脈に血栓性の変化が生じ,索状硬結としてふれる状態をMondor病という。 臨床的には原因となる脈管がリンパ管か静脈かを区別することは不可能である。
〔頻度〕
年間に1〜2例。 症状が乏しいため見逃されている症例が多いと思われる。
〔病因・発症機序〕
脈管の壁に浮腫と肥厚がみられるが,細胞浸潤は乏しく,一過性の変化と思われる。
〔臨床症状〕
Mondor病では季肋部から乳房部を経て腋窩,上腕内側に至る部位に,縦走して堅くふれる皮下の索状硬結をみる。
多くは直径が数mmの太さであり,長さは数〜十数cmに及ぶ。
周囲の皮膚を進展すると表面に隆起してみえる。
表面の皮膚は通常色であり,炎症を思わせる症状はない。
強く摘むと圧痛を感じたり,ひきつれたような感じを訴えるが,一般に自覚症状は乏しい。
〔診断のポイント〕
皮膚表面から堅くふれる自覚症状の乏しい数mmの太さの索状硬結。
炎症所見を欠く。
〔治療方針〕
数週間の経過で自然に軽快し,治療の必要はない。
経過を観察する。
〔参考文献〕 今日の診療プレミアム Vol.15
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